大阪で一棟アパート・一棟マンションを買う前に確かめること

大阪の一棟アパート・一棟マンションを候補にするなら、表示された価格や利回りを比べる前に、建物の状態、確認と検査の書類、修繕の履歴、入居の状況の資料、管理の体制、所在地の災害の想定を確かめましょう。一棟を買うと、区分マンションの一戸とは違い、土地の権利や入居者、賃貸借や管理の契約、何十年分の修繕の積み重ね(されてこなかった修繕も含めて)までまとめて引き継ぐことがあるからです。建物の良し悪しは建築士に、契約が何を意味するかは仲介会社と弁護士に判断してもらいます。この記事は2026年9月1日時点の情報で、大阪の不動産投資として一棟を検討する方に向けて、何を見てどこで専門家に任せるかを整理します。税金・融資・ビザは扱いません。
区分マンションの一戸と一棟で変わること
区分マンションの一戸なら、建物はほかの所有者と分け合います。一棟のアパートやマンションを丸ごと一人で買うなら、分け合う相手はいません。屋根、外壁、配管、階段、エレベーターがあればそれも含めて、維持と費用の計画は所有者が手配することになります。ただし、管理の契約で業務の一部を会社に任せることはあります。[1]
早めにはっきりさせたいことが二つあります。一つは、土地が建物と一緒に売られるのか、借地(借地権)なのか。もう一つは、どの入居者・賃貸借契約・記録・管理やサブリースの契約が売買に付いてくるのかです。何がどんな条件で買い手に移るかは法律の問題なので、契約の前に仲介会社と弁護士に聞いておきます。[1]
建物の状態
2023年住宅・土地統計調査によると、大阪府の居住世帯のある住宅のうち、1980年以前に建てられたものは88万6,200戸で、全体の21.1%にあたります。[2]個々の建物を判断するには、建てられた年のほかに、次のことを確かめます。
- 建築確認の時期を聞く。 いつ建築確認を受けたか、どの耐震基準で設計されたか、耐震診断や耐震改修を受けたことがあるかを尋ねます。
- 建物の調査を頼む。 既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)は、国が定めた既存住宅状況調査方法基準に従って既存住宅を調べます。技術者は、国土交通省のページに載っている講習の実施機関の検索ページから探せます。基準の解説は共同住宅も対象に含め、住戸ごとの調査のほかに、建物単位の調査(住棟型調査)も定めています。[3]調査で何を見て何を見ないかは、頼む前に技術者に聞いておきましょう。耐震診断や設備の点検は、別に頼む必要があるかもしれません。
- 耐震の補助を市に聞く。 大阪市の「民間建築物の耐震化の促進」のページは、上町断層帯地震や南海トラフ巨大地震を具体的なリスクとして挙げ、「民間マンションの耐震診断・耐震改修補助制度」を載せています。検討中の建物が使えるかどうかは、市に問い合わせます。[4]
確認済証と検査済証
売主には、確認済証、検査済証(工事が終わった後の完了検査の証)、図面を求めます。古い建物では、検査済証が手に入らないことがあります。国土交通省によると、完了検査率(その年度に交付された検査済証の件数を、同じ年度の確認件数で割った割合)は、1998年度に約38%、2016年度に約9割でした。[5]国土交通省は2014年に、検査済証のない建築物を調べるためのガイドラインを出し、その中で、1999年以前は検査済証の交付を受けていない建築物が半数以上を占めていたと書いています。このガイドラインは2025年4月に「既存建築物の現況調査ガイドライン」に統合されました。[6]
検査済証が無いとき、それがこの建物にとって何を意味するかを推測で決めないでください。調査で何が分かるか、修繕や用途の変更、将来の売却にどう響きうるかを、仲介会社と建築士に聞きます。
修繕の履歴とこれからの計画
国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」は、賃貸住宅のオーナーに、長期的な計画をつくってメンテナンスに取り組むことと、修繕のたびに図面や現場写真などの記録を残すことを勧めています。国土交通省の2019年の報告は、長期修繕計画をつくる前に集める資料として、新築時の設計図書や修繕履歴を挙げています。[7]
売主には、次の資料を求めましょう。
- 修繕の履歴(何を、いつ、誰が、いくらで行ったか)
- 長期修繕計画があればその計画と、次に必要と見込んでいる工事(屋根、外壁、防水、給排水管、エレベーター)
- 消防用設備や昇降機の点検の報告書
- 分かっている不具合・雨漏り・苦情の一覧
記録が無いことだけでは、建物の状態は分かりません。調査で分かることと分からないことを、建築士に聞いておきます。
入居の状況の資料(レントロールと賃貸借契約書)
入居の状況の資料は、買おうとしている収入そのものを表します。実際に入金された額と突き合わせて読みます。
- レントロール(賃料の一覧表)。 住戸ごとに、入居中か空室か、賃料、敷金などの預かり金、契約の開始日、滞納の有無。
- 賃貸借契約書。 一覧だけでなく、特約を含めて契約書そのものを見ます。
- 空室と入れ替わり。 ここ数年の空室と退去の状況と、空いた住戸が埋まるまでにかかった期間。
- 預かり金と滞納。 売買の後に入居者へ敷金を返すのは誰か、売買の時点で滞納されている賃料はどうなるか、それぞれ売主と買主の間で精算するのか、するならどのように行うのかは、弁護士に聞くことです。
次に、まわりの市場を見ます。2023年住宅・土地統計調査では、大阪府の空き家率は14.2%で、全国の13.8%を上回りました。府内の空き家70万1,900戸のうち、43万6,100戸(62.1%)が「賃貸用の空き家」です。大阪市の空き家率は16.1%で、空き家29万4,600戸のうち20万4,000戸が賃貸用でした。[8]これらは住宅全体の数字で、検討中の建物のような一棟の賃貸住宅だけを数えたものではありません。
人口の数字は別の調査で、時点も後になります。2025年国勢調査(2025年10月1日現在)について大阪府が独自に集計した速報では、大阪府の人口は2020年より0.83%減りました。一方で大阪市の人口は280万8,624人で、2020年から5万6,212人(2.04%)増え、増えた人数は府内の市町村で最も多くなりました。大阪市の世帯数は7.91%増え、1世帯あたりの人数は1.77人です。府は、この速報が総務省の公表する結果と異なる場合があるとしています。[9]一つの建物の空室については、近くの似た住戸がどれくらいの期間で、いくらの賃料で埋まっているかは、仲介会社が答えられる質問です。
大阪の一棟アパート・マンションの広告で「利回り」を読む
広告に利回りが載っていたら、建物を比べる前に、そばの注記まで読みます。どの賃料を前提にした数字か、その賃料が今払われているか、何の経費を引いていないか、割る価格に購入の諸費用を含むかを、仲介会社に聞いてください。利回りは確かめるための数字で、この先の収入の見通しとしては読まないでください。
建物を管理するのは誰か
海外に住むオーナーにとって、管理会社は建物を見る目の代わりになります。どの会社か、契約に何が含まれるか(賃料の集金、入居者の募集、修繕、清掃、緊急時の対応)、オーナーにどう報告するか、売買の後も契約が続くのかを聞きましょう。2021年6月に全面施行された法律にもとづいて登録された賃貸住宅管理業者は、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で調べられます。2025年度末(2026年3月末)時点の登録数は10,197社です。[10]
建物をまとめて会社に貸し、その会社が各住戸を入居者に貸す形もあります。日本ではサブリース(一括借り上げ)と呼ばれる仕組みです。2018年、国土交通省と消費者庁は(のちに金融庁も加わって)、アパートなどのサブリース契約を検討している人に向けて、賃料減額をめぐるトラブルなどが起きていると注意を呼びかけ、契約の内容とリスクを十分に理解してから契約するよう求めました。[11]建物にこうした契約が付いているなら、弁護士に読んでもらいましょう(下の「申し込みの前に聞くこと」を参照)。
地震・水害・火災の想定
- 南海トラフ。 地震調査委員会は、南海トラフで今後30年以内にマグニチュード8〜9クラスの地震が起きる確率を、一つのモデルでは「60%〜90%程度以上」、もう一つのモデルでは「20%〜50%」としています(2026年1月1日時点)。二つの手法に優劣は付けられないとしたうえで、地震調査研究推進本部は、高い方の値を念頭に行動するよう求めています。[12]
- 上町断層帯。 この断層帯の主部区間は、大阪の大都市の中心部に位置しています。地震調査委員会は2026年8月28日の一部改訂で、二つの区間が同時に活動すればマグニチュード7.7程度の地震が起きる可能性があること(この場合の確率は示していません)、評価の対象外のやや小さい地震でも大都市の中心部で起きれば大きな被害が生じうることに留意が必要なこと、活断層があること自体がその地域で大きな地震が起きる可能性を示すことを書いています。同じ改訂で、主部区間を最も低い確率の区分であるZランク(今後30年以内にほぼ0%〜0.003%、2026年1月1日時点)としました。最新の活動時期が前の評価より新しくなったためです。ただし、これは少数の地点の調査にもとづくため、最新の活動のときに区間の全域が動いたという十分な証拠が無いという指摘があるとも付記しており、沿岸部区間は確率を算出できていません。[13]ランクは確率の区分で、地震が起きたときの被害の大きさを表すものではありません。この評価が建物の耐震の確認にどう関わるかは、建築士に聞きましょう。
- 揺れと液状化。 大阪府は2026年3月31日、南海トラフ地震と、上町断層帯などの直下型地震について、震度分布と液状化可能性を見直して公表しました。推計は250mメッシュ単位で、個々の宅地とは必ずしも一致しません。地盤改良などは考慮しておらず、液状化可能性が低いとされた地域でも液状化しないとは限りません。[14]
- 洪水・高潮・津波。 大阪市の区ごとの水害ハザードマップは、河川の氾濫、内水氾濫(大雨を排水しきれずに起きる浸水)、高潮、津波による浸水の想定を示しています。地図で浸水が想定されていない区域でも浸水することや、実際の浸水深が想定と違うことがあります。[15]国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、住所を入れるだけで、その地点の災害のリスクを一つの地図に重ねて見られます。[16]
- 木造住宅が密集した地域の火災。 大阪市の密集住宅市街地は、JR大阪環状線の外周部など、戦災で焼け残った地域を中心に広がっています。市の密集住宅市街地整備プログラムは、特に優先的な取り組みが必要な地区(優先地区)を約1,300haとしています。大地震で火災が同時に多く起き、消防活動が難しくなれば市街地の大火に広がり、古い建物の倒壊で道路がふさがれて避難や救助の妨げになるおそれがあると書いています。[17]検討中の建物が市の優先地区に入っているか、まわりに何が建っているかを聞きましょう。
これらは地域ごとの地図と推計で、一つの建物についての予測ではありません。建築士や保険会社に何を聞くかを決める材料として使います。
申し込みの前に聞くこと
- 土地は建物と一緒に持つのか、借地なのか(聞く相手:仲介会社)
- 入居者から預かったお金を返す義務を含め、どの契約上の権利や義務が買い手に移るのか、その預かり金はどう引き渡すか・精算するのか(仲介会社と弁護士)
- サブリースの契約があるなら、その契約と適用される法律のもとで、オーナーに払われる賃料が変わることはあるか、どちらがどんな条件で契約を終えられるのか(弁護士)
- レントロール・賃貸借契約書・実際の入金は合っているか(通帳の記録や管理会社の収支報告を仲介会社に求める)
- いつ建築確認を受けたか、検査済証はあるか、建物は今も確認を受けた図面のとおりか(仲介会社と建築士)
- どの調査を頼むべきか、設備は別の点検が要るか、見つかったことからどの修繕を先にするか(建築士)
- 将来この建物を売るとき、どんな買い手が考えられるか、似た建物は売れるまでどれくらいかかったか(仲介会社)
- 買うとき・持っている間・売るときに、どんな税金と費用がかかるか(税理士)
- 借入れはできるか、どんな条件か(金融機関)
- 住所が浸水・津波・液状化の想定区域や、市の密集市街地の優先地区に入っていないか(地図を自分で見たうえで、仲介会社にも)
- 売買を扱う仲介会社が宅地建物取引業の免許を受けているか。先に触れた国土交通省の検索システムで、会社の名前から調べられます。国土交通大臣の免許の業者と、都道府県知事の免許の業者が載っています。[18]
確かめる順番が変わるとき
- 古い木造の建物、または検査済証が無い。 建築士の調査を先に行います。価格だけでなく、計画そのものが変わることがあります。
- サブリースの契約が付いている。 利回りを見る前に、弁護士と一緒に契約を読みます。
- 空室が多い、または賃料の滞納がある。 空室が埋まると見込む前に、理由を突き止めます。
- 所在地が浸水や液状化の想定区域、または密集市街地にある。 そのリスクを受け入れるかを決めます。進めるなら、調査・保険・修繕の計画にそのリスクを織り込みます。
- 建て替えや用途の変更を考えている。 申し込みの前に、その土地で何ができるかを建築士に聞きます。
- 借入れをする。 候補を絞り込む前に金融機関と話します。
海外に住むオーナーには、ほかに二つあります。管理会社からの連絡の受け方、建物を点検する人、緊急時に動く人を、引き渡しの前に決めておくこと。そして、賃料が入るのも修繕費を払うのも円なので、為替が動けば、収益を測る自分の通貨に換えた額はどちらも大きくも小さくもなることです。[19]
大阪の不動産投資の候補を絞り込む
ここまでの六つの確認で、候補を絞り込んでください。今売りに出ている物件は物件一覧で大阪に絞って探せます。主な地域や駅は大阪府のガイドにまとめています。気になる建物が見つかったら、仲介会社に聞く項目を最初の問い合わせに添えて送ると、話が早く進みます。
出典
- 一棟の購入と区分の一戸の購入の違いについての、SORA 編集部の説明です。権利や、売買で何が移るかについての法的な見解ではありません。
- 大阪府「令和5年住宅・土地統計調査 結果の概要(大阪府)」(2025年2月28日)
- 国土交通省「既存住宅状況調査技術者講習制度について」(2026年8月30日のアーカイブ)、国土交通省「既存住宅状況調査方法基準の解説」(2024年10月25日)
- 大阪市都市整備局「民間建築物の耐震化の促進」(2026年3月18日)
- 国土交通省住宅局建築指導課「資料6 建築確認検査制度の概要」(2019年3月14日)、国土交通省「国土交通白書(平成17年度)第2部 建築行政の推進」
- 国土交通省「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(2014年7月)、国土交通省「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドラインの策定について」(報道発表。2025年4月1日に「既存建築物の現況調査ガイドライン」に統合された旨の注記あり)(2014年7月2日)、国土交通省「既存建築物の活用の促進について」
- 国土交通省住宅局「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」、国土交通省住宅局「賃貸住宅の計画的な維持管理及び性能向上の推進について ~計画修繕を含む投資判断の重要性~」(2019年3月)
- 大阪府「令和5年住宅・土地統計調査 結果の概要(大阪府)」(2025年2月28日)、総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」(2024年9月25日)
- 大阪府「令和7年国勢調査 大阪府の人口及び世帯数(速報)について」(2026年5月22日)と添付の速報
- 国土交通省「【詳細版】賃貸住宅管理業者等への全国立入検査結果(令和7年度)」(2026年6月5日)、国土交通省「建設産業・不動産業:賃貸住宅管理業者情報」(2026年3月13日のアーカイブ)
- 金融庁・消費者庁・国土交通省「アパート等のサブリース契約を検討されている方は契約後のトラブルにご注意ください!」(2018年3月27日公表、2018年10月26日更新)、国土交通省「サブリース契約に関するトラブルにご注意ください!~トラブルの防止に向けて消費者庁と連携~」(2018年3月27日)、国土交通省「サブリース契約に関するトラブルにご注意ください!~トラブルの防止に向けて金融庁・消費者庁と連携~」(2018年10月26日)
- 地震調査研究推進本部 地震調査委員会「長期評価による地震発生確率値の更新について」(2026年1月1日算定)(2026年1月14日)、地震調査研究推進本部「『南海トラフの地震活動の長期評価(第二版一部改訂)』の手引き」(2026年8月28日のページ更新)
- 地震調査研究推進本部 地震調査委員会「上町断層帯の長期評価(一部改訂)」(2026年8月28日)
- 大阪府「震度分布・液状化可能性(令和8年3月31日公表)」(2026年3月31日)
- 大阪市危機管理室「水害ハザードマップ」(2026年3月23日)
- 国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト」、国土地理院「ハザードマップポータルサイトのリニューアルについて」(2023年5月30日)
- 大阪市「大阪市密集住宅市街地整備プログラム」(令和3年3月、令和8年3月中間見直し)(2026年3月31日のアーカイブ)
- 国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」
- 海外に住むオーナーに向けた SORA 編集部の助言です。税務・法律・為替についての助言ではありません。
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