東京のタワーマンションを買う前に確かめたいこと:階の選び方・地震・修繕積立金

東京のタワーマンションを買う前に確かめたいこと:階の選び方・地震・修繕積立金
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タワーマンションに法令上の明確な定義はなく、一般には20階建て以上のマンションを指します。眺望や設備、共用施設が魅力ですが、大きな地震の長周期地震動では高層の建物が長い時間大きく揺れることがあり、高層階ほど揺れが大きくなる傾向があります。また、地震の後にはエレベーターが止まることもあります。買う前には、長期修繕計画と修繕積立金の積み立て方、エレベーターと防災の備え、今の眺望が将来さえぎられないかを資料で確かめてください(2026年7月21日時点の情報です)。

タワーマンションとは:法令上の定義はなく、一般に20階建て以上

神戸市の報告書は、タワーマンションの明確な定義は存在しないとしたうえで、「高さ概ね60m以上もしくは20階以上のマンション」を報告書での定義にしています。[1]不動産経済研究所も20階建て以上を「超高層マンション」として集計しており、国土交通省の修繕積立金のガイドラインにも「超高層マンション(一般に地上20階以上)」とあります。[1]

建物の高さによって決まりが変わる線は法令にいくつかあり、構造とエレベーターに関わる主なものは次の二つです。

  • 高さが60mを超える建築物:構造の各部分に連続的に生じる力と変形を把握する方法で構造計算をし、国土交通大臣の認定を受けます(建築基準法第20条)。[2]
  • 高さが31mを超える建築物:原則として非常用の昇降機(非常用エレベーター)を設けます(建築基準法第34条。例外があります)。[3]

台湾の基準と比べると、台湾の建築技術規則の高層建築物の章でいう「高層建築物」は、高さ50m、または16階以上の建築物です。[4]線引きが国によって違うので、日本の物件資料は階数と高さの両方で確かめてください。

高層階と低層階はどこが違うか

同じタワーマンションでも、高層階と低層階とでは暮らし方が変わります。階を選ぶときに比べたい点は次のとおりです(どちらがよいかは暮らし方によります)。

高層階低層階
眺望と日当たり近くの建物にさえぎられにくい(向きによる)周りの建物にさえぎられやすい
長周期地震動のときの揺れ揺れ幅が大きくなる傾向[5]同じ建物の中では比べると小さい(揺れはする)
エレベーターが止まったとき上り下りが大変で、家庭内の備蓄で暮らすことになる[6]上り下りする階段が少ない(体の状態によるうえ、備蓄も必要)
家具の対策東京消防庁は概ね10階以上に住む人に、転倒・落下の防止に加えて移動防止対策も欠かさず行うよう呼びかけている[7]転倒・落下の防止は必要。家具によっては移動防止も

東京消防庁が東日本大震災の後に都内で行ったアンケートでは、家具類が転倒・落下・移動した割合は11階以上で47.2%(回答者36人)、1階または2階で16.8%でした。高層階ほど割合が高く、東京消防庁は長周期地震動が一因と考えられるとしています。[7]2011年に一度行われた調査で、建物ごとの予測ではありません。

結論が変わる場合。 階段の上り下りが難しい家族がいる場合や、停電中も自宅で暮らせることを重く見る場合は、低層階や、階段の負担が小さく停電への備えが家族に合う物件を優先して比べるとよいでしょう。資産として持つのが目的で、自分ではほとんど住まない場合も、管理の質と賃貸の需要を仲介会社に別に確かめてください。

長周期地震動:高層階ほど大きく揺れるのはなぜか

長周期地震動とは。 気象庁の説明では、大きな地震が起きると、周期の長いゆっくりした揺れ(長周期地震動)が生じます。高層ビルは固有周期が長いため、この揺れと「共振」しやすく、共振すると長い時間大きく揺れます。また、低層階より高層階のほうが大きく揺れる傾向があります。[5]政府広報オンラインも、長周期地震動は震源から数百km離れた場所にも大きな揺れをもたらすことがあり、ゆっくりした揺れが長く続くと説明しています。[5]

長周期地震動階級。 気象庁は、高層ビルの中での揺れを階級1から階級4に分けています。階級3は、立っていることが困難になり、固定していない家具が移動することがあり、不安定なものは倒れることがある揺れです。階級4は、立っていることができず、はわないと動けない揺れで、固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもあります。いずれも起こりうる現象で、実際の影響は建物によって違います。[8]2023年2月1日からは、長周期地震動階級3以上が予想される場合にも緊急地震速報(警報)が発表されます。[9]

過去の例。 2011年の東日本大震災では、東京都内の高層ビルで大きな揺れが観測され、低層階より高層階のほうが大きく揺れました。震源から約700km離れた大阪市でも、高層ビルでエレベーターが止まり、閉じ込め事故が起きています。[10]

新しい建物と既存の建物の違い。 国土交通省は2016年6月に対策を公表しました。関東などの対象地域で、高さが60mを超え、2017年4月1日以降に申請する性能評価に基づく大臣認定で新築される建築物は、南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動を考慮して検討します。既存の超高層建築物については、新たに設定された長周期地震動が設計時の想定を上回る場合に、自主的な検証や必要に応じた補強が望ましいとしており、義務ではありません。[11]中古のタワーマンションを買うときは、性能評価を申請した時期、構造形式、設計でこうした検証をしたかどうかを仲介会社に確かめてもらうとよいでしょう。

東京で大きな地震が起きる確率。 地震調査研究推進本部は、南関東の直下でプレートの沈み込みに伴うマグニチュード(M)7程度の地震が今後30年以内に起きる確率を70%程度と評価しています(算定基準日は2026年1月1日)。評価の対象領域のどこかで起きる確率で、特定の場所の確率ではありません。[12]

これらの資料が示しているのは揺れの傾向で、ある建物が安全かどうかを示すものではありません。個々の建物の構造と対策は、設計の資料と管理組合・管理会社の説明で確かめてください。

地震の後のエレベーターと在宅避難

エレベーターは自動で止まる。 2009年9月28日から、新しく設けるエレベーターには地震時管制運転装置が義務付けられています。定められた大きさの揺れを感知すると、かごを自動的に出入口の戸の位置に止め、戸を開くか、中の人が戸を開けられるようにする装置です。[13]日本エレベーター協会によると、強い揺れ(震度4以上程度)で運転を休止したエレベーターは、損傷がなくても、原則として技術者の点検を受けるまで復帰しません。大規模な地震では、復旧までに大幅な時間がかかる可能性があります。[14]自動診断のうえで仮復旧運転ができる機能を備えたエレベーターもあります。[15]

東京都の被害想定。 東京都が2022年5月に公表した被害想定では、都内のエレベーターは約166,000台です。都心南部直下地震の場合(冬・夕方、風速8m/s)、閉じ込めにつながり得るエレベーターの停止は最大22,426台と想定されています(地震時管制運転装置で止まるだけのものは含みません)。同じ被害想定は、停電でエレベーターが止まると、タワーマンションなどの中高層階では地上との行き来が難しくなり、家庭内の備蓄が十分でなければ自宅にとどまるのは難しくなる、とも書いています。[6]

停電から断水になることも。 東京都は、停電でポンプが動かなくなると断水につながると注意を促しています。マンションの住民には、管理組合などで防災マニュアルを作っているか、携帯トイレなどの備蓄(1週間分以上)があるかを確かめるよう勧め、防災倉庫は各階または数階ごとに置くとよいとしています。[16]

東京都の登録制度。 東京都には「東京とどまるマンション」という登録の制度があります。耐震性があることを前提に、防災マニュアルを作り、年1回以上の防災訓練か安否確認の方法づくりのどちらかに取り組んでいるマンションを登録します(停電時でも給水と1基以上のエレベーターを動かせる非常用電源を設けていれば、それでも登録できます)。2026年6月からは☆1〜5の5段階で表示する形に改められ、☆1がこのソフト対策、非常用電源・エレベーターの閉じ込め防止・エレベーターの早期復旧・防災備蓄のハード対策が一つ増えるごとに☆が一つ増えます。[15]物件を見るときは、登録されているか、どの段階かを尋ねてみてください。

設備と管理:管理費と修繕積立金の見方

共用施設が充実していることはタワーマンションの魅力の一つですが、将来の修繕費とも関わります。分譲マンションの住戸を買うと、物件の価格のほかに、毎月の管理費と修繕積立金を負担するのが一般的です。[17]この記事では金額には触れず、仕組みと確かめ方を説明します。

タワーマンションの修繕費が高くなりやすい理由。 国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(2024年6月改定)は、地上20階以上のマンションについて目安を別に示しています。超高層マンションは外壁などの修繕に特殊な足場やゴンドラが必要で、共用部分の占める割合も高いことなどから、修繕工事費が増える傾向があるためです。共用施設が充実したマンションも、修繕工事費が高くなる傾向があります。機械式駐車場があるマンションでは、修繕積立金の目安を計算するときに駐車場の分を別に加算します。[17]

主な二つの積立方式。 修繕積立金の積み立て方には、主に「均等積立方式」(はじめから計画に沿って同じ額を積み立てる)と「段階増額積立方式」(はじめは少なく、段階的に増やしていく)があります。ガイドラインは、将来にわたって安定的に積み立てる観点からは均等積立方式が望ましいとしています。段階増額積立方式では、増額しようとしたときに区分所有者の間で合意ができず、修繕積立金が不足した事例も出ています。新築マンションを買う人は、分譲会社が示した修繕積立金がどちらの方式で計算されたものかを確かめる必要がある、ともしています。[18]中古の物件なら、管理組合の長期修繕計画を見てください。

長期修繕計画。 国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」は、計画期間を30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上としています。また、5年程度ごとに調査・診断をして、その結果をもとに計画と修繕積立金の額を見直す必要があるとしています。[19]

実際の状況。 国土交通省の2023年度のマンション総合調査では、長期修繕計画があり修繕積立金を徴収している管理組合のうち、計画に比べて現在の積立額が不足しているところは36.6%でした。修繕積立金の制度がある管理組合のうち、段階増額積立方式をとっているのは47.1%です。単棟型で20階建て以上のマンションに限ると段階増額積立方式は58.8%ですが、回答が51件しかないため、参考程度に見てください。[20]

結論が変わる場合。 長期修繕計画が何年も見直されていない、積立額が計画を大きく下回っている、近いうちに修繕積立金の大幅な値上げが予定されている、といった場合は、眺望がどれほどよくても、購入を考え直す理由になり得ます。

眺望:東京タワーと東京スカイツリー

東京タワーや東京スカイツリーが見える物件を探すなら、まず方角を確かめましょう。東京タワーは港区芝公園にあり、高さは333mです。東京スカイツリーは墨田区押上にあり、高さは634mです。[21]同じ建物でも、向きによって見える景色は違います。窓がどちらを向いているかは現地で確かめてください。

気をつけたいのは、眺望が周りの開発によって変わることです。不動産経済研究所の2026年6月の資料によると、2026年3月末時点で、東京23区で2026年以降に完成を予定している超高層マンションは124棟・50,935戸(全国では319棟・107,408戸)です。これは計画の数字で、同じ資料は、工事費の高騰で計画が大幅に延期されたり見直されたりする案件も出ていると書いています。[22]今見えている景色が、将来、新しい建物にさえぎられる可能性があります。

東京都の「都市計画情報等インターネット提供サービス」では、用途地域や都市計画道路など、計画決定された区域を地図で見られます。ただ、地図が示すのは概略の位置で、将来どんな建物が建つかまで分かるとは限りません。[23]周りに再開発の計画があるかどうかは、仲介会社か、物件のある区の区役所に確かめてください。

東京のマンション価格の見方:統計からは階による違いは分からない

東日本不動産流通機構(レインズ)が2026年7月に公表した資料では、2026年6月の東京都区部の中古マンションの成約㎡単価は平均131.15万円で、前年同月比1.5%の上昇でした。中古の成約データで、新築は含みません。[24]

この統計は地域別・価格帯別に分けたもので(平均の面積と築年数も載っています)、タワーマンションかどうかや階数では分けていません。[24]過去の成約の平均であり、将来の価格を示すものではありません。同じ建物の中でも、階・向き・眺望によって成約価格が違うことがあります。価格を比べるときは、同じ建物か条件の近い物件の成約事例を仲介会社に出してもらうとよいでしょう。

仲介会社や専門家に確かめること

  • 書類:重要事項調査報告書、長期修繕計画書、管理規約、ここ数年の管理組合の総会の議事録
  • 長期修繕計画:計画期間、最後に見直した時期、次の大規模修繕工事の予定時期
  • 修繕積立金:均等積立方式か段階増額積立方式か、今後の値上げの計画、現在の積立額
  • 管理費と修繕積立金のこれまでの改定の履歴と、建物全体とその住戸の滞納の有無
  • エレベーターの台数、非常用の昇降機、地震時管制運転装置の有無(早い時期に設けたエレベーターには付いていない場合があります)、自動診断・仮復旧運転の機能の有無
  • 停電時の非常用電源(どの設備に、どのくらいの時間電気を送れるか)と、電気設備の位置
  • 管理組合の防災マニュアル、防災倉庫と備蓄、「東京とどまるマンション」への登録の有無
  • 性能評価を申請した時期、構造形式(耐震・制振・免震)、設計で長周期地震動をどう検討したか
  • 物件の住所でのハザードマップ(浸水・液状化など)の結果
  • 周りの都市計画と再開発の計画(眺望がさえぎられないか)
  • 税金は税理士、ローンは金融機関、ビザは専門家に別に確かめてください。この記事では扱いません

物件の一覧から比べ始める

今どんな物件が出ているかは、掲載中の物件の一覧で見られます(東京以外の地域の物件も載っています)。区ごとの様子を先につかみたいときは、東京都の地域ガイドから読み始めてください。気になるタワーマンションが見つかったら、上の確認項目を仲介会社に渡して、資料をそろえるよう頼んでみてください。

出典

  1. タワーマンションと地域社会との関わりのあり方に関する課題と対応策 最終報告書(神戸市、2025年2月);超高層マンション動向 2026(不動産経済研究所、2026年6月4日);マンションの修繕積立金に関するガイドライン(国土交通省、2024年6月改定)
  2. 建築基準法 第20条(e-Gov法令検索)
  3. 建築基準法 第34条(e-Gov法令検索)
  4. 建築技術規則建築設計施工編 第227條(台湾・全國法規資料庫)
  5. 長周期地震動とは?(気象庁);ビルの高層階を大きく揺らす「長周期地震動」緊急地震速報に追加!(政府広報オンライン、2022年11月25日)
  6. 首都直下地震等による東京の被害想定 第3章;同 第5章(東京都防災会議、2022年5月25日)
  7. 家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック(抜粋);自宅の家具転対策(東京消防庁)
  8. 長周期地震動階級および長周期地震動階級関連解説表について(気象庁)
  9. 長周期地震動に対応した防災気象情報の強化について(気象庁、2022年10月26日);緊急地震速報の発表基準への長周期地震動階級の追加(気象庁)
  10. 長周期地震動による被害(気象庁)
  11. 超高層建築物等における南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動への対策について(国土交通省、2016年6月24日)
  12. 長期評価結果一覧(地震調査研究推進本部、2026年1月14日);相模トラフ沿いの地震活動の長期評価(第二版)(同、2014年4月)
  13. 建築基準法施行令 第129条の10(e-Gov法令検索);エレベーターの安全に係る技術基準の見直しについて(国土交通省)
  14. 昇降機の安全性について;大規模地震発生時のエレベーター早期復旧等に関するご協力のお願い(日本エレベーター協会)
  15. 東京とどまるマンション情報登録・閲覧制度基本方針(東京都、2026年6月5日施行);「東京とどまるマンション」登録表示制度の見直しを行います(東京都、2026年6月5日)
  16. マンション防災(東京都、2024年1月)
  17. マンションの修繕積立金に関するガイドライン(国土交通省、2024年6月改定);令和5年度マンション総合調査結果(国土交通省、2024年6月21日)
  18. マンションの修繕積立金に関するガイドライン(国土交通省、2024年6月改定)
  19. 長期修繕計画作成ガイドライン(国土交通省、2024年6月改定)
  20. 令和5年度マンション総合調査結果(国土交通省、2024年6月21日);同 データ編(管理組合向け調査の結果)
  21. 会社概要(東京タワー);東京スカイツリーを知る、アクセス(東京スカイツリー)
  22. 超高層マンション動向 2026(不動産経済研究所、2026年6月4日)
  23. 都市計画情報等インターネット提供サービス(東京都都市整備局);都市整備(東京都)
  24. 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年6月度;同 資料(東日本不動産流通機構、2026年7月10日)

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